「スマデバ」時代のテレビ受像機 技術だけではニーズをつかめない

「スマデバ」時代のテレビ受像機 技術だけではニーズをつかめない | FRIDAYデジタル

そもそもの問題として、視聴者と生産側とで壮大な釦の掛け違いが起こっていることに気づいていないというのは以前に述べた通りであろう。

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過去、コンパクトカセットの後継規格として人々は何を選んだか。

非圧縮リニアPCMで録音できるDATでもなく、初期のMDよりも音質に定評があり、コンパクトカセットとの互換性もあったDCCではなく、それらよりも音質の悪いもののディスクメディアならではのランダムアクセスという利便性を実現したMDであった。

それから約20年後、MDの後継規格として消費者は何を選んだか。

DATと同じくリニアPCMで記録でき、パソコンで簡単に作成でき、かつ安くなったCD-Rでもなく、平成5年の登場から飛躍的に音質が向上したMDよりさらに音質の悪いMP3をはじめとした圧縮音声による音楽配信やそれよりもさらに音質の悪い着うたフルを選んだ。

ちなみに、MDにも圧縮音声にもアナログ機器で問題となったヒスノイズやワウフラッターによる音揺れ、安いテープデッキにありがちの音のこもりも全くない。

それらは高価な機器を使えばある程度解決できたが、予算に限りのある庶民、特に少ない小遣いでやりくりしている若者にとっては難しいことであろう。

つまり、ディジタル化は機器の性能差をも埋めてしまい、安価な機器であっても高価な機器であっても自動車内や公共交通機関内での再生みたいな悪条件下においてはさほど変わらないという状況を生んでしまった。

同じことは映像機器にも言えるのではないだろうか。

今から40年ほど前の携帯型テレビはそれこそポケットはおろか鞄に入れるにしても困難であり、それから10年後辺りには鞄の中に楽に入るサイズの小型液晶テレビも登場したが、画面も小さく、内容がぎりぎりわかる程度のものであった。

しかも消費電力も大きく、乾電池数本、具体的には4本以上を用いて2時間程度しか視聴できなかった。

だが、今の携帯電話は30年ほど前の小型液晶テレビとは違い、ニュースのテロップや天気予報の記号、スポーツ中継における得点や順位などの情報も十分読むことができ、場合によっては番組に出演しているタレントの顔や表情をも描き出すなんてこともざらにある。

消費電力も2時間どころではなく動画を再生させてもそれの倍以上駆動するような製品もざらに存在する。そもそも、根本的に違うわけである。

一方で消費者が求めている物もあくまで「コミュニケーションの円滑化に供するためのコンテンツ」であり、音楽に関して言えばその音楽をネタに友人と話をする、カラオケでみんなと歌って盛り上がる、そういったものが求められているわけである。

そこで「この番組の画質は良かったよね」とか、「このCDの音がいい」などという話がなされるかといえばまず無かろう。そういった話をするのは所謂「オタク」と呼ばれる人々程度である。

それは音楽だけではなく、動画コンテンツに関しても言える。

現在不調なニコニコ動画も元々は動画に対するコメントを付けられ、そのコメントが動画の特定の時間に合わせて表示されるという疑似リアルタイム性を実現したという点で一躍ブームとなったが、まだInternetにリアルタイム性が求められていなかった、いや求めることができなかった当時と比較して、スマートフォンが個人に普及した今ではそれが求められるようになったがために動画に対する言及はよりリアルタイム性の高いSNS上で行われるようになり、利用者が減少したのではないだろうか。

そもそも、テレビの電源を付けたまま携帯電話の画面を注視し、その番組の内容をSNSに逐一投稿し、その投稿への反応に対応しているような人がテレビを集中して視聴しているとはとても言えないと思われる。

テレビ番組が持ち直しているとはいえども視聴者はそういった人々が大半であるということを考えると、番組に集中して視聴することを強いる高解像度放送に関しては何度も言うが視聴者とのミスマッチを起こし、テレビ離れを引き起こす可能性が高いのではないだろうか。

しかも、そういった情報は今や東京近辺のみならずそこからはるか1000km程度離れた北海道や青森、鹿児島や宮崎、高知や愛媛にも一瞬で伝わるわけである。ちなみに、北海道以外にはテレビ東京系列の放送局は存在せず、青森や高知に至っては3局、宮崎に至っては2局しか民放テレビ局が存在しない。

その上でいまだに地上波放送を主軸としたうえで地域制限みたいなことを行っていたらそりゃ視聴者も離れていくことであろう。

令和元年5月8日 0時45分追記

ところが実際の家庭では、食事をしながら、あるいはソファーに寝そべって、わざわざ眼鏡を付けてテレビを見る人はいない。3Dテレビはメーカーの思惑通りには売れず、絶滅して行った。

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このエントリでも概ね述べていることであるが、そもそもそういった「ながら視聴」を行う視聴者に対し媚を売り、同時にそれを取り込み是としてしまった放送局をはじめとした製作者側もある意味次世代放送失敗の理由と言えるのではないだろうか。

一方で「娯楽・余暇産業」というのは所詮は「時間」という名のパイの奪い合いに過ぎないわけであり、逆に「ながら視聴」を否定することでその「パイ」を縮小させることにつながりかねない以上は制作側としても避けたい部分はあるのだろう。

例えば、テレビが流されている食卓でテレビの電源が消され、そこにいる家族が会話を楽しむようになれば、人々はコンテンツに触れる機会が無くなる。つまりそれは「市場の縮小」に他ならない。

今後、日本で高解像度放送やコンテンツを本格的に普及させるためには人々に「コンテンツは集中して視聴するものである」という認識を持たせたうえでながら視聴を否定するような意識改革を行う必要があると思われるが、ただそれを行うとテレビの競合コンテンツが山ほど存在し、他者との時間共有を人々が楽しみだしている時代、おそらく失敗する可能性が高いことであろう。

令和元年5月11日追記

最近のオタク、単にアニメが見たいのではなく○○○○を求めてる! 一気見でもいまいちな理由はこれ : はちま起稿

ネットでリアルタイムでみんな一緒に実況して
共有すると面白さ以上の体験が残りますね。
1クールアニメじゃないけど、
ラピュタのバルス祭りも飽きないし。

最近のオタク、単にアニメが見たいのではなく○○○○を求めてる! 一気見でもいまいちな理由はこれ : はちま起稿

もうこれも何回も言っているが、世間はコンテンツそのものを求めているのではなくそのコンテンツを利用して他者との時間の共有やそれによる擬似共同体の形成、公表されていない次回のコンテンツに対する期待といったわくわく感のような「体験」を望んでいるのではないだろうか。

そのためには多額の予算を費やした上で従来型の「優れた」コンテンツを製作したところでそれが受け入れられるかはわからない。特に上記Webサイトに例示されている「ポプテピピック」は従来型コンテンツとして評価すると特段優れたものではない。

さらに、Internet動画配信のように「コンテンツをいつでも時間を問わず視聴できる」となると他者との時間共有という側面では不利と言える。そう考えると、日本で今後Internet動画配信サービスはリアルタイム性がない限りはまず失敗するのではないだろうか。

次回へのわくわく感にしても、日本全国どこでも視聴できる有料放送や衛星放送が最速放映となった今では改善されているものの、まだまだ深夜アニメがまともに放映されていない地域のほうが面積比としては大半であり、前述のとおりそういった情報は放映されていない地域や放映されていても最速の地域から遅れて放映されている地域の人々にも今や一瞬で伝わる。

そういった情報を番組が放映されていない地域や放映されていてもある程度の遅延を持って放映される地域の人々が目にしたら一定の疎外感を感じるのではないだろうか。

例としては相当品質の悪い事例ではあるものの、某掲示板で他者を挑発するような行動をとり、掲示板利用者の感情を逆なでした某少年とそのいやがらせへの対応に埒が明かなくなり、某少年が仕事を依頼した弁護士に対する嫌がらせをコンテンツとして楽しむ「ハセカラ民」のようにその「コミュニケーション円滑化ツール」は別に動画コンテンツでなくとも構わないわけである。

そう考えると、今後「動画コンテンツ」の行く末も怪しいところであろう。

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